最近、RSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ®筋注)についてのお問い合わせが増えています。
このワクチンは、生後6か月頃までのRSウイルスによる肺炎や細気管支炎などの重症化を防ぐことを目的としています。
接種は妊娠24〜36週(特に28〜36週)に1回接種することが推奨されています。RSウイルスは乳児にとって重症化リスクが高く、入院や呼吸管理が必要になることもあります。
出産前に予防できる点が大きなメリットです。2025年現在、このワクチンは任意接種(自費)となっており、当院では33,000円で接種を行っています。
【その他の妊娠中に接種が可能なワクチンについてもご紹介】
RSウイルス母子免疫ワクチン接種をお考えならば、是非これらのワクチンについてもご検討ください。(迷われている方は当院やかかりつけの産婦人科の先生にご相談ください)
〇インフルエンザワクチン(不活化)
妊娠中にインフルエンザにかかると重症化や早産のリスクが高くなります。妊娠時期を問わず接種が可能で、接種によってできた抗体が赤ちゃんにも移行し、生後しばらくの間インフルエンザ感染を防ぐ効果が期待されます。
※経鼻ワクチン(フルミスト®)は生ワクチンのため、妊婦さんには使用しません。
〇百日咳含有ワクチン(DTaP/Tdap)
乳児の重症百日咳を防ぐ目的で、海外では妊娠28〜36週の母体接種が推奨されていますが、日本では成人用の百日咳ワクチン(Tdap)は未承認の状態です。
そこで日本産科婦人科学会などでは実現可能な代替案として、日本で妊婦さんにも接種が認められている3種混合ワクチン(DTaP、トリビック®)を提示しています。お母さんが接種することで抗体が赤ちゃんに移行することは確認されていますが、乳児の重症化予防効果については、まだ十分に証明されていないようです。それでも、赤ちゃんを守る手段のひとつとして、妊婦さんへの接種を前向きに検討できると考えています。
〇新型コロナワクチン
妊娠中に感染すると、重症化や早産のリスクが高まることが知られています。希望する妊婦さんは接種可能であり、重症化リスクを下げる効果が報告されています。
参考文献・関連情報
- 日本産科婦人科学会「女性を脅かす感染症」
https://www.jsog.or.jp/citizen/7042/ - 日本産科婦人科学会「RS ウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ®筋注用)」
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/20250906_ippan.pdf - 日本産科婦人科学会「乳児の百日咳予防を目的とした百日咳ワクチンの母子免疫と医療従事者への接種について」
https://www.jsog.or.jp/news/pdf/infection07.pdf - こどもとおとなのワクチンサイト「妊娠可能年齢の女性と妊婦のワクチン」
https://www.vaccine4all.jp/news-detail.php?npage=2&nid=143