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私たちの
家庭医療・総合診療

“家庭医療”との出会い

副院長である私が、まだ学生だった頃の話です。
多くの医師が専門を選ぶとき、「どの臓器を診るか」「どんな病気を治すか」で診療科を決めることが一般的です。私も例外ではなく、学生時代はさまざまな実習を通じて自分に合う分野を探していました。
そんな中で出会ったのが、家庭医の先生たちです。当時、岡山県の大学に通っていた私は、北部の人口5,000人ほどの町にあるクリニックで実習をする機会を得ました。大学病院の実習とはまるで違い、驚きの連続でしたが、何より印象的だったのは、そこに関わるすべての人がいきいきと働いていたことです。医師もスタッフも、そして患者さんも、どこか温かく、楽しそうに見えました。

「自分もこんな場所で働いてみたい」
「こんなふうに関わりたい
――そんな気持ちが自然と湧き上がってきました。

大学に戻り、総合診療科の先生に相談すると、自分が見た医療は「家庭医療」と呼ばれ、それを専門とする医師を「家庭医」と呼ぶことを教えてもらいました。これが私と家庭医療との最初の出会いでした。

家庭医・家庭医療とは

家庭医とは、単に「何でも診る医者」ではありません。病気や症状の有無に限らず、患者さんの暮らし、家族との関係、地域とのつながり、人生の背景まで含めて診ることができるのが、家庭医の特徴です。

家庭医療とは、そうした“人をまるごと診る”視点で行う医療のこと。

たとえば、日本プライマリ・ケア連合学会では、家庭医療の目標を「患者さん自身だけでなく、その家族や地域の健康や幸福を高めること」としています。つまり家庭医は、“病気を治すこと”だけでなく、“よりよく生きること”を一緒に考え、支えていく医師なのです。

「総合」の専門医の誕生

日本では長らく「臓器別の専門家=専門医」というイメージが主流でしたが、少子高齢化や複雑化する医療ニーズにより「人全体を見る医師」が求められるようになってきました。

例えばこんなとき、
どうしますか?

高血圧と喘息と骨粗鬆症で複数の病院に通っていた一人暮らしの高齢者が、認知症になって自分で薬の管理が出来なくなった場合、何科のお医者さんと相談するのが良いのでしょうか?
受験生の息子がいる女性がいて、日中は仕事、帰ったら息子のお世話、更には月に何回か離れて暮らす父親の介護に行っていた場合、この(母であり妻であり娘でもある)女性が、脳ドックでは異常なしとされる「頭痛」や「だるさ」が続いたときに、何科のお医者さんと相談するのが良いのでしょうか?

これら時代によって移り変わるニーズから、2009年に日本家庭医療学会(現・日本プライマリ・ケア連合学会)によって家庭医療専門医が誕生しました。次いで2014年に設立された日本専門医機構によって2018年に内科や小児科、外科などと並ぶ基本領域の一つとして「総合診療科」と「総合診療専門医」が誕生しました。
まだまだ新しい専門性ですが、これからますます必要となってくる専門医です。

家庭医・総合診療医の
トリセツ

使い方でわかる
‘かかりつけ’の新しいカタチ

家庭医・総合診療医について少し知っていただけたと思いますが、実際にはどんな時に頼っていいのか分からない方も多いのではないでしょうか。迷ったときこそ、私たち家庭医・総合診療医の出番です。ここに我々の「トリセツ」(取扱説明書)を作ってみました。是非、ご参考にしてください。

家庭医のトリセツ
その1

迷ったら、まずはここから
その1「どこに行けばいいか分からないとき」

「この症状って何科?」「そもそも病院に行くべき?」そんな迷いのときこそ家庭医・総合診療医へ。体全体を見て、必要なら専門医にスムーズにおつなぎします。

家庭医のトリセツ
その2

情報を整理、全体を見渡す
その2「病気がいくつも重なっていて大変なとき」

高血圧、糖尿病、認知症など…いくつもの病院に通っている方も、家庭医・総合診療医が全体を整理し、必要な治療の優先順位を一緒に考えます。

家庭医のトリセツ
その3

地域連携のハブ
その3「介護・福祉のことで困ったとき」

在宅療養、介護保険、福祉サービス…「どこに相談すればいいの?」というときもご相談ください。 家庭医・総合診療医は地域の医療・介護・福祉との連携の“ハブ”として、必要な支援を一緒に整えていきます。

家庭医のトリセツ
その4

家族まるごと
その4「家族のことも含めて相談したいとき」

子ども、親、自分の健康…全部別々に相談していませんか?家庭医・総合診療医は「家族丸ごと」を診ることができます。一つひとつの背景を理解しながら、家族全体を支える視点でサポートします。

家庭医のトリセツ
その5

‘なんとなく’もあなたのサイン
その5「なんとなく不調、ちょっと不安…そんなとき」

「体調がなんとなく優れない」「でも病院に行くほどでもない?」そんな“グレーゾーン”の不調もOK。小さなサインを一緒に見つけて、早めにケアします。

家庭医のトリセツ
その6

心と体、どちらも大切にします
その6「心や暮らしのことも相談したいとき」

不眠・気分の落ち込み・孤独感…心の不調や生活上の困りごとも、身体とあわせてまるごと受け止めます。生活背景に寄り添ったケアを一緒に考えます。

家庭医とは、
“あなたの健康の伴走者”
そんなときこそ、
私たち家庭医・総合診療医の出番です。
あなたの生活に寄り添いながら、
病気だけでなく、
“人生”を診る医療をお届けします。

私たちがこの地で
総合診療・家庭医療を行う意味

代々紡いできた歴史への想い

森家が羽津の地で医業を始めたのは、室町時代末期、元亀年間と伝えられています。旧羽津病院の森家が「山の医者」と呼ばれていたのに対し、当院は古くから「町の医者」として親しまれてきました。
現存する記録のひとつとして、志氏神社一の鳥居のそばにある、文政元年(1818年)建立の石灯籠には、私の高祖父にあたる「森玄隆」の名が刻まれています。
「先生は何代目ですか?」と尋ねられることがありますが、残念ながら正確な代数を示す資料は残っておりません。ただ、いずれにせよ、はるか昔からこの地で医業に従事してきたことは間違いないようです。
医療は、時代とともに大きく姿を変えてきました。かつては外傷や感染症との闘いが中心であり、戦後は公衆衛生や環境問題への対応が重視されるようになりました。
現代においては、高血圧や糖尿病といった生活習慣病、うつ病や不安症などの心の病、がんや神経難病のように長期的な支援を要する疾患、さらに超高齢社会に伴う認知症やフレイル、介護の問題にも向き合う必要があります。 そして、記憶に新しい新興感染症への備えも、引き続き重要な課題です。
このように、疾病構造の変化に加え、少子高齢化や人口減少といった人口動態の変化に伴い、社会の医療に対するニーズはますます多様化しています。
「病気を治す」ことにとどまらず、「病気とともにどう生きるか」「どう予防するか」といった支援にまで、医療の役割は広がっています。
私たちは、代々紡いできた歴史を大切にしながらも、変化を恐れず、地域の皆さまの声に耳を傾け、知識と技術を磨き続けることで、これからの医療のあり方をともに考え、 示し続けていきたいと願っています。